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富士山基本情報

登山期間は7月上旬から9月上旬まで。安全確実に登頂するためには、お互いの顔が見える少人数のチームで、富士登山に慣れたリーダーと一緒に登りましょう。

◆気象条件
シーズンについて:
毎年山開きは7月1日。雪の多い年は、山開きのイベントはあっても、山頂には上がれません。除雪のできていない登山道を登るのは危険です。富士山は巨大な滑り台ですので、雪の上を落ちたら、加速度が付いて止まりません。積雪期は登山家だけに許された世界。間違っても登らないようにして下さい。登山道の除雪が済んでしばらくは、山頂に残った雪の上を歩くこともできます。真夏に雪で遊べるのは、富士山ならではの楽しみですね。

小屋が閉まるのは9月中旬です。9月下旬には初雪が降ります。登山シーズンはわずか1ヶ月半。その間に世界から人が集まるので、大変混んでしまうわけです。

天気の変化について:
「頭を雲の上に出し~」と歌われるように、雲より遙かに山頂が高くなるのが富士山です。雲は条件によって、富士山より低いことも高いこともあり、二層三層に重なることもあります。登山道をちぎれ雲が覆えば雨、過ぎれば晴れという具合に、天気の変化はあっという間に起こります。いつでも雨具が出せるように、リュックの一番上に入れておきましょう。

風について:
富士山は円錐形の独立峰です。風邪を遮るほかの山が周囲にありません。それで、風は富士山に直接当たり、斜面を這うように回って、風下に乱気流を作ります。風が強い日は、体をしたから持ち上げるような風が吹くことがあります。

雨について:
風が横から吹くなら雨も横殴りになります。いつも強いわけではなく、霧雨もしとしと雨もありますが、悪い条件を想定して準備をしておいて下さい。傘は使い物にならないと考えて下さい。下山した後のことを考えると、濡れた雨合羽で電車は乗れないので、傘も必要ですけれど。

雷について:
登山中に雲の中に入ってしまうことはよくあることです。初めての方は雲の中だと思わず、「霧が濃いな」と思うようです。この雲が雷雲だと、大変危険です。電気の発生源の中を歩くことになるわけですから。雷雲が近づいてきたら、近くの山小屋に入って、小屋の人に外を歩ける状況かどうか訊いてください。ゴム引きの雨具だから帯電しないというのは、都市伝説。雷のエネルギーには、雨合羽程度では対抗できません。
遠い雷を小屋の前で眺めるのは素晴らしい光のショーです。自然の神秘と美しさを堪能できるでしょう。積乱雲が高く発達した日の夕方、見られることがあります。

紫外線について:
標高が高いと酸素が薄くなります。山頂では、海抜0メートルを基準にして3分の2しか空気がありません。したがって、紫外線を遮るものが、それだけ少ないわけです。晴れていれば、1日で真っ赤に日焼けします。曇っていても日焼けはします。薄曇りくらいでは紫外線カットには不十分です。目を痛めないように、サングラスを着用し、お肌が気になる方はしっかり日焼け止めを塗っておきましょう。

◆地理
富士山は休火山です。江戸時代までは噴煙を上げていました。
噴火が止まって以来、富士山は少しずつ、削れています。大沢崩れと呼ばれる谷は、崩壊が現在進行形の場所。落石もだんだん多くなり、昭和の末に登山者が無くなる事故があってから、大沢を通るルートは登山禁止になりました。山は動かないようですが、変化し続けているのですね。

御殿場登山道と富士宮登山道の間の山腹には、宝永火口と呼ばれる、大きな噴火口があります。富士山は一般的にイメージされる、単調な円錐形ではなく、横っ腹にでこぼこがあるのです。富士山が一度にできたものではなく、何度もの噴火を繰り返して今の形になったことをうかがい知ることができます。今の地層の下には今より低くて形も違う、古い富士山が眠っていることも地質調査から明らかになっています。

山頂は静岡県と山梨県の境目になっています。どちらの県も「我が県の山」といえるわけです。ちなみに、山頂は富士浅間神社の私有地です。昔から神域とされてきたからでしょう。山に対して、ありがたい、おそれおおい、という気持ちを持って、大切にしてほしいものです。

富士山の麓には富士五湖と呼ばれる湖があります。山中湖から、反時計回りに河口湖、西湖、精進湖、本栖湖と、山頂から見て東北東から西北西まで並んでいます。富士山に降った雨や雪が、火山礫で覆われた山腹にしみこんで伏流水となり、麓でわき水となって湖に水を供給しています。富士山に川が無く、流入する川がない湖が涸れないのは、こうした仕組みになっているからです。
わき水で有名のなのは、忍野。忍野百海と言われるわき水が何カ所も出ています。ここは観光バスがよく立ち寄るところで、わらぶき屋根の民家も、観光用に残してあります。

麓には、溶岩が固まる時にできた空洞が、いくつもの洞窟になって残っています。
鳴沢氷穴のように、観光用に入れるものもありますので、一度入ってみたらいかがでしょうか。観光用に整備されていない洞窟は危険ですので、入らないようにしてください。

洞窟と同じように、危険な感じがするのが、富士樹海。一度入ったら出られないというのは、あながち伝説ではありません、溶岩で覆われた足下はでこぼこして歩きにくく、短い距離でも時間がかかり、疲労します。灌木が多くて見通しが利かないために、方向を失いやすい状態です。見晴らしも聞かないため、現在地がわからなくなります。こうした条件が重なるので、樹海には入らないようにしましょう。磁力を帯びた溶岩もあって、方位磁石が効かないことも、噂だけではありませんので、磁石は地面にはおかず、胸の当たりで計測するようにしましょう。
GPSがあれば大丈夫だと思うかも知れませんが、基地局から遠いために携帯のGPSは使えないと覚悟してください。木々に覆われて衛星の電波が妨げられるためか、登山用のGPSでも位置情報が取得できないことがあります。